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danmaq authored Jun 19, 2018
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</head>

<body class="bodymatter" epub:type="bodymatter">
<h1 id="toc_index_1">
<span class="mo">プロローグ</span>
</h1>

<p>
<span class="mo"> ほんの数日前、森の中の小さな小屋。</span>
<br/>
<span class="mo"> 彼女はそこで、花見宴会用の魔法の符、通称【スペルカード】と呼ばれる魔法と花火を融合させたような、美しい弾幕を演出する魔法道具の創作に勤しんでいた。</span>
<span class="mo">このスペルカードは本来、魔法を使った決闘に用いられるのが一般的だが、彼女のように一発芸用に使うこともまた、決して珍しいことではない。</span>
<br/>
<span class="mo marisa">「あー、また失敗だぜ」</span>
<br/>
<span class="mo"> 彼女の視界を奪わんばかりの、もうもうと立ち昇る白煙を逃すべく窓を開け放つ。</span>
<span class="mo">窓は白煙を吸い込む代わりに、外の冷たい空気を部屋の中に吐き出す。</span>
<span class="mo">窓の外は一面の銀景色。</span>
<span class="mo">雪はとうに止み、雪の上に顔を出す新芽も増えてきており、暦も卯月を過ぎて皐月を迎えようとしているのに、どうにも春は雪を追い払うだけの力を持っていないようである。</span>
<span class="mo">春が、まるで何かを悲しんでいるかのようだ。</span>
<br/>
<span class="mo marisa">「ま、花見できるまで幾分あるだろうし、完成を急ぐ必要もない、か」</span>
<br/>
<span class="mo"> 彼女は机の上の失敗作を片付けると、部屋の奥の暗がりに佇むハンガーに手をかけ、黒い上着を身に着け、大きな三角帽子を頭に乗せる。</span>
<span class="mo">そして部屋の角で次の仕事に備えて休んでいた竹箒を手に取ると、他は手ぶらのまま、外の銀世界へと繰り出した。</span>
<br/>
<span class="mo"> 目的地は、博麗神社──</span>
<br/>
<span class="mo"> そして彼女の名は霧雨魔理沙、竹箒に跨り大空を駆ける、普通の魔法使いだ。</span>
<span class="mo rein">「霊夢!」</span>
</p>

<p>
<span class="mo"> そう、間違いなく数日前までは、私は霧雨魔理沙という少女を名乗り、魔法使いのような出で立ちを整え、竹箒に跨り空を駆けていた。</span>
<span class="mo">それから、一体何があっただろう。</span>
<span class="mo">確か……。</span>
<br/>
<span class="mo"> 霊夢をからかいに博麗神社に行ったら、境内はもぬけの殻で荒れ果てていた。</span>
<span class="mo">おまけにあいつの必殺武器、陰陽玉まで転がっている始末。</span>
<span class="mo">こりゃただ事じゃない、とそこから霊夢探しを始めたんだ。</span>
<br/>
<span class="mo"> 霊夢を探しにまず紅魔館へと向かったところ、あの館の主、レミリアに執拗に絡まれたね。</span>
<span class="mo">あいつ霊夢好きだし、何か知っているかと思ったけど、まるで空振りだった。</span>
<span class="mo">そういえば、その前に誰かに会ったような記憶もあるが……思い出せない。</span>
<span class="mo">たぶんあまり重要な人ではないだろう。</span>
<br/>
<span class="mo"> いずれにしても、あいつを振り払って図書館に行ったところで、パチュリーに彼女の死を知らされた。</span>
<span class="mo">だから次に白玉楼へと向かったんだ。</span>
<br/>
<span class="mo"> そこで、幽々子からかなりヤバイ話を聞いたのを思い出した。</span>
<br/>
<span class="mo"> 幽々子曰く、幻想郷という世界は外の世界のとある少女が見ている夢で、霊夢はその夢の中における、その少女の【アバター】である。</span>
<span class="mo">そしてその少女の死期が近く、今まさに幻想郷が崩れ始める前夜であると。</span>
<span class="mo">……このような話だった筈。</span>
<span class="mo">ああそうだ、この話、結局霊夢に聞けなかったな。</span>
<span class="mo">彼女と会って、カッとなって弾幕勝負を始めちゃって、ふと気づいたらここにいた。</span>
<span class="mo">結局のところよくわからないけど、夢が終わるという内容の『夢』だった。</span>
<br/>
<span class="mo"> 妙にリアリティのある夢だった。</span>
<span class="mo">魔法とか、空を飛ぶとか、冷静に考えれば『あり得ない』とすぐ気づけるようなことが当たり前にあったにも関わらず、とてもリアルで、そしてとても長い間夢を見ていたような感覚がある。</span>
<span class="mo">だが、夢が夢であることは、起きてみて初めて気づくもの。</span>
<span class="mo">彼女はそのとてもリアルだった夢を、いつもと同じ単なる夢、それ以上でも以下でもない、そう納得しようとしていた。</span>
<br/>
<span class="mo"> ──そう思い込むだけで納得できるものなら、どれだけ楽だろうか。</span>
<span class="mo"> 弾幕決闘をしている筈が、次の瞬間、気が付くと彼女は自室のベッドで眠っていた。</span>
<br/>
<span class="mo rein">納得……できるわけ……ないじゃない</span>
<span class="mo rein">……あ</span>
<br/>
<span class="mo"> 彼女の顔から滴が落ちる。</span>
<span class="mo">魔法使いだった彼女は、それが単なる虚像だったということを受け入れられないでいた。</span>
<span class="mo"> まるで暗がりに目が慣れるかのように、最初ぼんやりとしていた意識が徐々に鮮明となる。</span>
<span class="mo">そして彼女は自分自身の手の平を見て、それから着ている服、ベッドの掛け布団、机、そして部屋全体を見渡した。</span>
<span class="mo">カーテンの隙間から光の帯が射し、なんの変哲もない古びたカーペットの上に一筋の光模様を描いている。</span>
<span class="mo">机の上には小さな洋時計が一定のリズムを刻むように、微かな声で囁きかけている。</span>
<span class="mo">奥の暗がりにセーラー服の掛かったハンガーがぶら下がって佇んでいる。</span>
<span class="mo">見覚えがある筈の黒い外套と黒い三角帽子は何処にも見当たらない。</span>
<span class="mo">部屋の角には棒型の掃除機が壁に寄りかかり、次の仕事に備えて休んでいる。</span>
<span class="mo">一瞬彼女の目にはそれが竹箒のようにも見えたが、何度見直してもそれはただの掃除機である。</span>
<br/>
<span class="mo rein">「霊夢……なんで……もう一度……眠れば幻想郷の夢、見られるかな……」</span>
<span class="mo"> 意識がより鮮明になるにつれ、彼女は一番考えたくない結論を下さざるを得なくなった。</span>
<br/>
<span class="mo"> 彼女は上ずった声でそう呟くと、ゆっくり目を閉じて、己の意識を再び夢の世界に戻そうと試みた。</span>
<br/>
<span class="mo"> ピンポーン。</span>
<br/>
<span class="mo"> その時、自室に響く電子音が、彼女の夢の記憶と感情、そして今から取ろうとしていた行動を一瞬リセットさせる。</span>
<br/>
<span class="mo maria">「おーい、遅刻しちゃうよー。</span>
<span class="mo maria">早くガッコいこー」</span>
<br/>
<span class="mo"> 電子音に続いて、外から微かに女性の声が聞こえてくる。</span>
<span class="mo">現実の記憶が夢の記憶を上書きしていく。</span>
<span class="mo">机の上に置かれている小さな洋時計は、不機嫌そうに口を『へ』の字に曲げて、チッ……チッ……と一定のリズムを刻むように、小さく囁きかけている。</span>
<br/>
<span class="mo rein">「あ……ごめん待ってて、今着替えるからー」</span>
<br/>
<span class="mo"> 彼女は慌てて大声で外の声の主に返事をして飛び起きると、部屋の奥の暗がりに佇むハンガーに手をかける。</span>
<span class="mo">そして赤いリボンが目立つセーラー服に着替えて、食パンを一枚ラップに包んでカバンに仕舞い、玄関を開け放った。</span>
<br/>
<span class="mo rein">「ゴメン、お待たせー」</span>
<br/>
<span class="mo"> 玄関に初春の冷たい風が舞い込み、彼女は一瞬ひるむが、そのまま外の世界へと足を踏み出す。</span>
<span class="mo">そして顔を上げると、目の前に彼女と同じ服装をした、一人の女の子がいた。</span>
<br/>
<span class="mo maria">「おはよ、
<ruby>澪音
<rp>(</rp>
<rt>れいん</rt>
<rp>)</rp>
</ruby></span>
<span class="mo maria">ガッコいこーって時にまだ着替えてないって、普通に考えて置いていくレベルよ?」</span>
<br/>
<span class="mo rein">「ごめんって。</span>
<span class="mo rein">あ、それより時間」</span>
<br/>
<span class="mo maria">「いっけない! 走らなきゃ!」</span>
<br/>
<span class="mo"> いくら悲しい夢を見ようとも、それが夢である以上、現実はそれを些末なものへと変え、そして風化させていく。</span>
<span class="mo rein">「夢……だったのね、何もかも」</span>
</p>

<p>
<span class="mo"> 目的地は、彼女らの通う高校──</span>
<br/>
<span class="mo"> そして彼女の名は【
<ruby>澪音
<rp>(</rp>
<rt>れいん</rt>
<rp>)</rp>
</ruby>】、友達と一緒に、学校へと向かう下り坂を軽快に駆け降りる、普通の女子高生だ。</span>
</p>
</body>

</html>
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