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huideyeren committed Jul 6, 2024
1 parent dc13fbc commit 0d58936
Showing 1 changed file with 38 additions and 38 deletions.
76 changes: 38 additions & 38 deletions chapter/kinsho.re
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それから二年経って、釈放が決まった。そして、ペテルブルクを目指す船の上で、私はショパンのマズルカを聞いたのだ。これは、スラヴの琴線に触れる響き、哀愁の響きだったのだ。彼もまた、祖国に帰ることはできず、パリに斃れたのだ。なんということだ。祖国を追われ異国の地にて苦しんだ者の心を知ってしまうとは。それから、私は祖国に帰ることを嘆願したが、それはかなわなかった。あのドニプロ川を見下ろす丘の上に家を建て、老後を暮らしたいと思っていた。だが、それは叶わぬ夢だ。このペテルブルクで、私の命は尽きようとしている。せめて、亡骸だけでも、あの丘の上に……。ああ、私は、苦しい。身体が、燃え盛るかのように、熱い。せめて、最後に詩を残しておかねば……。

//quote{
私の貧しい道連れよ、@<br>{}
わたしたちは、もう@<br>{}
役にもたたない詩を綴るのはやめて、@<br>{}
遠い旅に出かけるために@<br>{}
馬車の用意を始めるときではなかろうか。@<br>{}
友よ、あの世の神のもとへ@<br>{}
休らいに行こうではないか。@<br>{}
わたしたちは疲れ、老いぼれたが、@<br>{}
少しばかり賢くもなったようだ。@<br>{}
もう十分ではないか! 眠りに行こう、@<br>{}
休らいに行こう、あの家に……@<br>{}
楽しい家を きみは見ることができるだろう!@<br>{}@<br>{}
 私の貧しい道連れよ、@<br>{}
 わたしたちは、もう@<br>{}
 役にもたたない詩を綴るのはやめて、@<br>{}
 遠い旅に出かけるために@<br>{}
 馬車の用意を始めるときではなかろうか。@<br>{}
 友よ、あの世の神のもとへ@<br>{}
 休らいに行こうではないか。@<br>{}
 わたしたちは疲れ、老いぼれたが、@<br>{}
 少しばかり賢くもなったようだ。@<br>{}
 もう十分ではないか! 眠りに行こう、@<br>{}
 休らいに行こう、あの家に……@<br>{}
 楽しい家を きみは見ることができるだろう!@<br>{}@<br>{}

 いや、友よ、まだ早い——@<br>{}
 行くのはまだ早すぎる。@<br>{}
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 友よ、わたしに@<br>{}
 気高い栄誉を与えておくれ。@<br>{}@<br>{}

だが、あれこれ言うのはやめて@<br>{}
医術の神のところへ@<br>{}
捧げものを持っていこう。@<br>{}
彼なら 冥府の川の渡し守と@<br>{}
運命の女神を欺いてくれるだろうか。@<br>{}
そうしたら、賢い老人がうまく立ち回っているあいだ、@<br>{}
横になって、史詩を綴ろう。@<br>{}
空の高みから大地を見下ろしながら、風に乗って翔び、@<br>{}
ひねもす六歩格の詩を詠んでは@<br>{}
屋根裏部屋に運び、@<br>{}
ねずみの朝@<ruby>{餉, げ}に供しよう。@<br>{}
それから、散文を歌ってみよう。@<br>{}
いいかげんにではなく、ちゃんと楽譜どおりに……@<br>{}
友よ、わたしのかけがえのない道連れよ!@<br>{}
火が消えてしまわないうちに@<br>{}
医術の神様のところに出かけた方がよいだろう。@<br>{}@<br>{}
 だが、あれこれ言うのはやめて@<br>{}
 医術の神のところへ@<br>{}
 捧げものを持っていこう。@<br>{}
 彼なら 冥府の川の渡し守と@<br>{}
 運命の女神を欺いてくれるだろうか。@<br>{}
 そうしたら、賢い老人がうまく立ち回っているあいだ、@<br>{}
 横になって、史詩を綴ろう。@<br>{}
 空の高みから大地を見下ろしながら、風に乗って翔び、@<br>{}
 ひねもす六歩格の詩を詠んでは@<br>{}
 屋根裏部屋に運び、@<br>{}
 ねずみの朝@<ruby>{餉, げ}に供しよう。@<br>{}
 それから、散文を歌ってみよう。@<br>{}
 いいかげんにではなく、ちゃんと楽譜どおりに……@<br>{}
 友よ、わたしのかけがえのない道連れよ!@<br>{}
 火が消えてしまわないうちに@<br>{}
 医術の神様のところに出かけた方がよいだろう。@<br>{}@<br>{}

 底なしの泥の川、@<br>{}
 冥府の川を渡り、@<br>{}
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ミハイロは、ただ黙って頷いた。目を輝かせて出ていく同志の背中を見ながら、彼は独り思いの丈をつぶやき始めた。

//quote{
これは、「仮想」なのだろうか?@<br>{}
現に、私は、私たちは「ここ」にいる。@<br>{}
「ここ」に暮らしているではないか!@<br>{}@<br>{}
 これは、「仮想」なのだろうか?@<br>{}
 現に、私は、私たちは「ここ」にいる。@<br>{}
 「ここ」に暮らしているではないか!@<br>{}@<br>{}

私たらは「過去」にも「現在」にも、@<br>{}
決して「未来」にも存在しない、と言いたいのか?@<br>{}@<br>{}
 私たらは「過去」にも「現在」にも、@<br>{}
 決して「未来」にも存在しない、と言いたいのか?@<br>{}@<br>{}

では、ここにいるのは何者なのだ?@<br>{}
「幽霊」なのか?@<br>{}
まさか、この世界から私たちをも消そうとしているのか?@<br>{}@<br>{}
 では、ここにいるのは何者なのだ?@<br>{}
 「幽霊」なのか?@<br>{}
 まさか、この世界から私たちをも消そうとしているのか?@<br>{}@<br>{}

ならば、私は「わからせ」る!@<br>{}
この世界が、「現実」だということを!
 ならば、私は「わからせ」る!@<br>{}
 この世界が、「現実」だということを!
//}

その握る手に、力が入っていた。ツァーリの勅令が書かれた紙が、歪に潰されていく。
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